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ふるさと佐久


by newport8865
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川上犬が上野動物園で公開され大人気だったという

今年の干支(えと)にちなんで、上野動物園からの依頼により、川上犬の仔犬が3頭、上野動物園に貸し出され、この1月9日まで公開され大人気だったという。

この川上犬の産地(というのか?)川上村は、千曲川(信濃川)源流の村として知られている。主要街道の佐久甲州街道の道筋からも外れているため、往古は人や物の往来は相当閉ざされていたようである(金峰山の大弛峠、信州峠、野辺山を越えれば甲州であるし、三国峠を越えれば秩父なのでそれなりの交流はあったようだが)。

明治生まれの文豪島崎藤村は、小諸義塾の教師を務めていたおり、千曲川河畔を遡る小旅行を何度かしており佐久の各地に足跡を記しているが、その紀行を散文の「千曲川のスケッチ」(青空文庫へのリンク)というエッセイにまとめており、その中で川上村にも触れている。ただ、実際には足を踏み入れたことがなかったらしい。下記の引用部分が、川上村についての記述だが、川上村の人々にとってはあまり愉快ではないものだろう。ただ客観的にみれば、明治30年代の島崎藤村の在小諸時代はもとより、佐久の山奥の村村の暮らしは太古からこのようなものだったのではなかろうか?

ここから更に千曲川の上流に当って、川上の八カ村というのがある。その辺は信州の中でも最も不便な、白米は唯病人に頂かせるほどの、貧しい、荒れた山奥の一つであるという。


(川上の八カ村というのは、現在大字地名の 御所平、原、樋沢、大深山、居倉、秋山、梓山、川端下のことを言う。) 

旧石器時代の馬場平遺跡や、縄文時代の大深山遺跡が残されている川上村ではあるが、水田耕作が農業の中心となってからは、高冷地ゆえの貧しい苦労の多い生活を長く余儀なくされたのだろう。そのような時代に、人々の狩猟を助けたのがこの川上犬だったわけだ。(大深山遺跡などから犬の埋葬跡などが発見されれば面白いのだがどうだろうか。)


川上犬は、伝承としては秩父多摩国立公園に属する深山のオオカミと飼い犬が交配した子孫だと言われ、猟犬として勇敢で、飼い主への忠誠心が非常に強く、一人前となった成犬を別の土地の人に贈ったりすると、元の飼い主の家に戻ってきてしまう、という習性を強く持つという。(信濃毎日新聞「しなの動植物記」) 

ただ、以前、ニホンオオカミのこと調べたblog記事を読んだことがあるが、もともとオオカミと犬が分かれたのはほんの1万年ほど前のことで、遺伝子レベルではオオカミと犬はまったくの同じ生物だとのことだ。写真を見たが、以前ネットで見た多摩動物公園のシンリンオオカミの幼獣とそっくりだった!

このblog記事に張ってあるリンクを辿っていったところ、「日本の地犬」という網羅的なページがあった。川上犬が属する「信州柴」についても書かれている。

ところで、今回の上野動物園での公開は、Blogでも結構話題になっていたようだ。

テクノラティの「川上犬」での検索結果
http://www.technorati.jp/search/search.html?callCode=-324.9191&queryMode=main&query=%E5%B7%9D%E4%B8%8A%E7%8A%AC&language=ja

Oh~Wan Da Four Life (http://diary.tonten.chu.jp/?eid=69156) から川上犬の部分を全文引用させていただいた。(朝日新聞の記事のようだ)
東京・上野動物園。戌年の今年初め、一番人気は天然記念物「川上犬」だった。
公開最終日の9日には約1千人が会場に詰めかけた。
「干支にちなんだ動物展でこれほどの人気は初めて」と飼育担当者も驚いた。
 川上犬は秩父山地や八ヶ岳など標高2千㍍級の山々に囲まれた長野県南佐久郡川上村が主な生息地。
体高35~45㌢。信州系の柴犬である。「信州柴」の一種で猟犬だった。
1921(大正10)年ごろに県天然記念物に指定された。
威厳のある容姿から日本オオカミの血を引くとの言い伝えもある。
交流が制限されていたことから交配がほとんどなく純血が保たれてきたらしい。
 35年、国鉄小海線の開通による森林伐採のため外から人が流れ込んだ。
洋犬も一緒に入り、雑種化が進んだ。戦時中は食糧難から軍による撲殺命令も出た。
絶滅したかに思われたが、八ヶ岳に住む老人がオスとメスを保護していたという。
 現在の川上犬は、その子犬をもとに村人が川上犬に近い犬との交配を繰り返したものだ。
村内では現在50~60匹いる。保存会会長を務める藤原忠彦村長は
「完全復活には長い時間がかかるだろうが焦らずに純血度を高めていきたい」と話す。(以下略)

~『朝日新聞』より


純血度を高めるということは、遺伝病のリスクが増えることなので、困難な課題だと思う。天然記念物ではあるが、本来飼い犬は天然の産物でなく、人為の産物ともいえるものなので、困難さがつきまとうのだろう。大風呂敷的に言ってしまえば、DNA的にはチワワもピレネー犬(グレート・ピレニーズ)も同じ犬なのだから。
by newport8865 | 2006-01-13 20:16 | 雑談